引用
死というのは一番念頭に入れておかなければならない概念です。けっして避けるべきものじゃないんです。
生命は瞬間瞬間にも死んでいます。この一秒は二度と戻りません。だから、「捨てる能力」ですね、大事なのは。つかまってしまうと苦しい。なぜかというならば、つかまろうとしてもつかまれないんです。だから、幻想を、蜃気楼を追っているような感覚になってしまう。
だから、どんなものにも執着することは初めから不可能なんです。この不可能のことを可能だと勘違いして、やろうとするから苦しみが生まれるんです。だから、蜃気楼を水だと勘違いした人は、ものすごい苦労を味わうんですよ。
蜃気楼は蜃気楼だと知れば、これは触ることも出来ないと知れば、なんの苦しみもないんです。そういうことで執着なんて初めから成り立たないもので、我々は勘違いしている。だから、死という概念を入れておくと、「捨てる」ということができるようになります。別に、理想の死に方がどうのと言わなくても、理想的に死ぬときは死にます。
バリバリの私見です。
この本も「項目307」で終了です。
最後の5項目くらいは、「死」ではなくて、「慈悲の瞑想」と「ヴィパッサナー瞑想」について書いても良かったのでは・・・と思っています。
ちょっと「死」に関して28項目は多いなあ、と思います。
内容に関しては、この28項目をグルグル回っているような感じで、ここはガツンと瞑想と解脱で締めてほしかったような気がします。
たぶん編集者が一般の方向けに、文章をピックアップしたのでしょうけど、それだけ「死」に関しては、みなさん、おおいに興味を持っている、ということなのでしょうか?
個人的には、編集者の文章のピックアップと構成にはちょっと疑問がありますけど・・・・、それを打ち消すくらい、仏教への関心が薄い方への、先生の懇切丁寧なお話には頭がさがります。
で、先生の上記の文章の境地に近づくためにはいろいろな仏教の実践が大事になってきます。ということを教えてくれる本です。